フェードアウトしていった商品たち(前編)

テレビという、まるで水槽にも似た箱の中で、
次から次へと浮かんでは消えてゆくお笑い芸人たち。

「そーいえば、●●最近みないよねー、どこいったんだろーねー」
と語られるなら、まだよいいものの、
「えーと、なんだっけあれ? あの"なんでだろう〜"って歌ってたジャージの人」
と名前すら思い出せなくなっていたり、
ともすれば、忘れていることすら忘れていたりすることもしばしば。


そんなお笑い芸人たちと同じように、
清涼飲料水やスナック菓子にも忘却の彼方へ消えていったものがある。

今日は、そんな商品について振り返ってみよう。
さかのぼること約15年。
当時、まだ毛も生えてない純粋無垢な小学5年生だった私は、
とあるひとつのジュースに夢中になっていた。

それは、「ジョルトコーラ」。
カフェインの含有量が、コカコーラの2倍だという宣伝文句で売り出されていた。
コカコーラに比べて、よりパンチが効いた味だったように、うっすらと記憶している。


私の生活圏内でこのジョルトコーラを売っていたのは、
阪急電車の十三駅にある自動販売機だけだった。

幼き日のsoyana少年は、
月1000円のこづかいでは、3日に1回しかジョルトコーラを飲めず、
おとなになったら、好きなだけジョルトコーラを買って、
朝昼晩と飲めるのになぁ
と指をくわえていた。

それでも、阪急宝塚線宝塚行きのホームで、急行電車を待っている間に、
ホームの自動販売機で買ったジョルトコーラを飲んでいる至福のひとときは、
何にも換えがたいものだった。


とはいえ、幸せの絶頂というのは長くは続かないのが世の常。
中学にあがろうかという頃には、
ジョルトコーラはその自動販売機から姿を消していた。

ジョルトコーラは、私の前からいなくなってしまったのだ。
密かに好きだった子が遠くの学校に転校していってしまったかのように
私の胸はポッカリと穴があいてしまった。


15年たった今でも、たまに大阪に帰ったときに、十三駅のプラットホームで電車を待っていると、
無意識のうちに無いはずの飲み物を探している自分がいることに気づく。

「えーっと、あの飲み物なんだっけな? ジ、ジョ、・・・・」


参考:
さよならJolt Cola (コーラ白書)
ジョルト・コーラ - Wikipedia